まずは遺言書を作ろう

こんな失敗にご注意を!

山田さんの場合

 

私には、父に先立たれた母がいまして、実家に同居している兄夫婦が母の面倒を見ていました。

 

母の財産は預貯金と自宅の土地・建物だけでした。家族で集まったときに遺言の話になったこともありますが、母も兄も「うちには兄弟で揉めるような財産はない」「遺言なんてお金が掛かるだけ」「俺達兄弟で平等に分ければいい」という感じで「相続争い」ということにはまったく危機感を感じていませんでしたし、私も当時兄と仲が良かったので、それで良いと考えていました。

 

しかし、この時兄が言っていた「平等に」という言葉に兄弟間で大きな認識の違いがあることは、母が亡くなった後にわかりました。

 

母の葬儀が終わり、そろそろ兄と相続財産の分配について話をしようと思っていた矢先に兄から電話がありました。「相続手続のために遺産分割協議書が必要だから、郵送するので署名と捺印して返送してほしい」ということでした。

 

後日送られてきた遺産分割協議書を見てみると、自宅の土地・建物は兄が相続して、母親の預貯金500万円を私が相続するという内容でした。

 

自宅の土地・建物の価値をどんなに少なく見積もっても2000万円以上はあります。あまりに身勝手な内容に驚き、すぐに兄に電話しました。

 

「これじゃ平等と言えないよ。」と伝えたところ、兄は「生前に母親の面倒を見てきたのは自分だし、平等に考えれば自宅は自分が相続して当然だ」ということを言ってきました。

 

母の面倒をみてきた兄が、自分よりも幾分多く財産を相続することに納得はしていましたが、その分割割合の差には不満があったのです。

 

その後、改めて兄から電話がかかってきて「100万円払うからそれで納得してくれ」「これ以上は奥さんに怒られてしまうから・・・」と強い口調で言われました。母のためにも、これ以上兄弟間で争いたくないと考えた私は、仕方なくその内容で同意しました。

 

後で兄との共通の知人に話を聞いたところ、もともと兄は自宅を相続する代わりに、私に代償金500万円を払うつもりだったのですが、生前母親の面倒を見てきた兄嫁に猛反対されていたようです。

 

それ以降兄との関係がギクシャクしてしまい、連絡を取り合うこともほとんど無くなってしまいました。

 

 

このように裁判沙汰にはならなかったものの、相続時の話し合いで遺恨を残してしまい、兄弟が不仲になってしまうケースは非常に多いです。子供達のために残していった「相続財産」が、意に反して「争族財産」になってしまうのです。

 

山田さんの場合には、相続財産に相続人の一人が住んでいる不動産があったことが「争族」発生の大きな要因となりました。

 

もし、相続財産が事実上の分割が容易な預貯金2500万円だけであれば、お兄さん1500万円・山田さん1000万円ということでお互いすぐに納得できたかもしれません。

 

事実上の分割が困難とされる不動産の場合には、分割方法について相続人同士の考え方のズレが生じやすくなってしまいます。特に相続人の一人がその不動産に住んでいれば尚更です。

 

生前に少しだけ手間と費用を掛けて分割方法を指定する遺言(例 不動産をAが相続する代わりに、Aは代償金としてBに金○○万円を払う)を残しておけば、このような事にはならなかったでしょう。

 

それは遺言の法的拘束力もさることながら、ほとんどの相続人は「故人の意思があれば、それに従おう」という心理状態になるのが通常だからです。少しでも心配のある方は早い段階で、専門的知識のある司法書士などに相談することをオススメします。